初めに
先日公開した「マウスセンサー周りのソールについての考察」は多くの方にご閲覧いただき、また国内トッププロの方にリツイート頂くなど、大きな反響がありました。
今回はそれに関連し、センサーとトラッキング面との距離が変動した時にどの程度DPIに変化が生じるのか検証を行いました。
前述の記事内ではPixArts社のセンサーのデータシートについて言及していますが、本記事ではLogicool社のG Pro Wireless(G-PPD-002WL)のHERO16Kセンサーにて検証しています。
今回の検証に当たり、THK社のLMガイドアクチュエータ、三明電子産業のサーボモーターとサーボアンプを用意しました。
アクチュエータのリードは10mm、サーボモーターのフィードバックエンコーダーは2000pprを4逓倍しています。
つまり、0.00125mm単位で位置決めが可能です。
マウスパッドは新品ではないですが、Steelseries社のQcK miniをカットして使用しています。
【音量注意】
— HID-Labs🖱⚒ (@hid_labs) July 31, 2020
サーボモータとリニアアクチュエータで色々実験中です。
この装置の最高速度の時速3kmで20cm移動させてみました。
よくマウスのスペックシートに書いてあるIPS換算すると約34IPSです。 pic.twitter.com/zfctppds6d
1インチピッタリ動かしてます。 pic.twitter.com/Mk5pZIzHLT
— HID-Labs🖱⚒ (@hid_labs) August 1, 2020
検証方法
- アクチュエータにマウスを両面テープで貼り付け、1インチ(25.4mm)移動させる。
- MouseTesterでそれを記録する。
- アクチュエータとマウスの間に0.1mmのマスキングテープを貼り、トラッキング面とセンサーの距離を0.1mmずつ増やして1~2を繰り返す。
注意していただきたいのは、1の段階で本来のセンサーとトラッキング面との距離ではないということです。
つまり、最初の試行の段階ではセンサーとトラッキング面距離がx[mm]になり、
以降「x+0.1[mm]」「x+0.2[mm]」・・・となります。
検証結果
まず、MouseTesterで取得したデータのxSum vs. Timeを使用します。
これは実際に移動したカウント数を見るのに便利です。
アクチュエータで移動させたxSum vs. Timeのグラフの全景は次のようになります。
センサーとパッドの距離が適切ではないですが、こんな感じです。 pic.twitter.com/NQPmXpatID
— HID-Labs🖱⚒ (@hid_labs) August 1, 2020
検証を行って、必要な箇所を拡大したデータは次の通りです。
マウスのDPI設定は800DPIです。
データから数値を取り出すと次のようになります。(移動カウント数の絶対値を使用します。)
- 距離x[mm]のときに1インチ移動させたときのカウント数は約710カウント
- 距離x+0.1[mm]のときに1インチ移動させたときのカウント数は約727カウント
- 距離x+0.2[mm]のときに1インチ移動させたときのカウント数は約747カウント
このように、たった0.1mmでもセンサーとの距離が変化するとDPIにも変化が及びます。
例えば800DPIで振り向き25cmになるように設定してプレイしていて、10cmのフリックショットを行った場合、たった0.1mmのセンサーとマウスパッドの距離の差が約67カウント分のずれ、つまり本来の移動させた感覚から約2mm分ずれを生じさせます。
このようなデータから、前回記事のセンサー回りのソールの意義について、裏付けの一つになったのではないでしょうか。
マウスを固定する治具が完成したらセンサー回りのソールの有無によるDPI変化の検証も行ってみたいと考えています。
また、マウスは量産品ですが、製造時の個体差がセンサーの高さ回り・ソールなどに生じていれば、DPIの値に個体差が出てくることも考えられます。